秋の湯沢 味わい旅
「川連~稲庭~皆瀬~若畑」 ~2011年10月 湯沢市~
2011年10月22日(土)・23日(日)の2日間、県南の魅力を探る旅の第2弾「旬を感じるツアー」(略して「旬感ツアー」)、「秋の湯沢 味わい旅(主催:秋田コスモトラベル)」が行われました。 女滝沢森林浴歩道(ブナ林)のウォーキング(上写真)や、地元・湯沢翔北高校の生徒さんの案内で小安峡大噴湯を散策する「ちねつあー(地熱体感ツアー)」、若畑集落では地元の方々との心触れ合う交流の時間と、今回も盛りだくさんの内容。特に今回は芸術の秋ということで、川連漆器伝統工芸館での「川連漆器」の彫刻・沈金体験や、食欲の秋に合わせた「稲庭うどん」の製造体験など、技術を学ぶ中で地域を味わう特別な旅となりました。 |
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車窓より見えた、稲刈り後の田んぼ。 |
西仙北ハイウェイターミナルにて、ひと休み。 |
◆1日目 | |
湯沢市川連漆器伝統工芸館にて、毛彫り・沈金体験。
★伝統工芸品・川連漆器とは・・・ 秋田県湯沢市の川連地区に、800年以上伝えられている工芸品です。漆で塗装された漆器の表面に四季折々の草花や鳥などを浅く彫り、さらに生漆をすりこみ光沢ある金箔を添えたり(沈金)、金粉や朱・青など他の漆粉を蒔く技術です。そうすることで実用的な堅牢さと美しさが増し、漆器に華やかな趣を与えています。 |
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漆の朱をイメージした、工芸館の入り口。 |
一階の、展示販売フロア。 |
2階に上がると、赤と黒の実物大の川連漆器のお椀が貼られた大きな装飾品が出迎えてくれました。 すっごく期待が高まる…。 |
そして、穏やかな光沢に包まれたテーブルとイスが。まるでお洒落な喫茶店のようで、「ここで本当に体験があるの?」という感じ。 |
モダンなデザインの漆器も展示されていました。 |
海外の方にも、とても人気があるようです。 |
こんな現代アートな川連漆器に出会うとは思っておらず、ちょっと新鮮な感覚。 気分が盛り上がってきたところで、そろそろ川連漆器の毛彫り・沈金体験といきますか~。 |
指導してくださったのは、この道何十年の大関廣さん。「5年間師匠について寝泊まりして修業して、それからずっとだ。今はそんな時代でねぇからな、後継者不足で。育成会で頑張って繋いでいかねば」 |
【置目】…あらかじめ紙に描いた下絵を元に、描く絵の輪郭を写します。 【側彫・毛彫】…専用鉋で輪郭や陰影を彫ります。 【箔置】…彫った部分に漆を摺り込み、金箔を置きます。 【仕上げ】…上質の和紙で、余分な箇所の箔を拭き取ります。 |
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歴史資料館では、800年に及ぶ歴史を物語る文献や実際使用される工具、更に過去から現代までに至る道具や名品なども展示されています。
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会議室・体験室の壁には、湯沢市を代表する観光と物産が描かれたパネルが展示(大関さんの作品は、旧湯沢市の市役所と絵灯篭、川魚を表現した部分)。
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何とか完成。先生の見本のようには上手く出来なかったけれど、面白い体験でした。今度また、友人を誘って遊びに行こうかな。
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「いつになったら一人前かって?自分は、職人と言うものは死ぬまで一生一人前なんてないと思っている」と謙虚な大関さん。心構えのことをおっしゃっておられるのでしょう。そんな匠の作品からは「守るべき伝統・後世に残す宝」の重みが伝わってきます。 かつては川連地区を中心に漆器業を営む家は何百戸とあったそう。その伝統と技法を絶やさぬよう、湯沢市川連漆器伝統工芸館では、こうした体験教室などを通じて後継者育成をすすめています。詳しく知りたい方は、直接秋田県漆器工業協同組合(0183-42-2410)へお問い合わせください。 |
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佐藤養助本店にて、稲庭饂飩の製造体験、昼食。
★稲庭饂飩(いなにわうどん)とは・・・ 秋田県湯沢市の稲庭地区に、江戸の昔より一子相伝・手延べにこだわり伝えられてきたうどんです。その滑らかで上品な舌触りは、やがて全国的にも美味なうどんとして知られることになりました。 |
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【稲庭うどん製造体験】 稲庭うどんの特徴である「手綯い」の工程から「つぶし」「延ばし」までを体験。 |
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あらかじめ職人が「練り」と「小巻」の下準備をして下さった生地を、両手で縒(よ)りながら、二本の棒に「あや掛け」します。 |
「あや掛け」された生地は、大人二人で両端を持って引っ張っても、容易には切れません。生地を寝かせた分、弾力があるためです。 |
「つぶし」をした生地を、両手でうまくほぐしていきます。この作業をすることで、くっつきにくくします。 |
「延ばし」の作業。生地の状態を見て、手でうどんの中央部分をさすりながら延ばしていきます。 |
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「こねる時、おぼろ状にすると気泡ができ、そのまわりにグルテンの層が集中し、これが旨さとなる。弾力と艶もでる。他のうどんは空気を抜こうとするけれど、“潰し”の作業と気泡のおかげで、茹で時間も少なくて済むんです」 一度で500g(1束270g×2束)程手ないをするそうで、1束は40本という規格もあるそうです(店によって規格には若干の差があります)。稲庭うどんの原料となる小麦は、国産も少しあるもののその殆どがオーストラリア産(季節によってはアメリカ産)だそうです。 |
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「こうした体験でより多くの皆さんに知ってもらって、食べてもらえたら」と佐藤さん。かつて一子相伝を頑なに守ってきた稲庭うどんは、製法断絶防止と時代の流れに沿った新たな食文化へ進化のため、現在は技術を公開し、家人以外の職人をも受け入れているそうです。 先代の「秋田の美味しいうどんとして広く知ってもらいたい」という願いにより伝統的な技術は公開され(昭和47年)、現在まで様々な職人によって伝えられてきました。 そのおかげで私たちは今、こうして生産量も限られ庶民の口に入ることがなかった稲庭うどんを買い、食べることができます。 今後もこの稲庭地域から美味しい稲庭うどんが全国に発信され続けることでしょう。 |
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女滝沢森林浴歩道(ブナ林)ウォーキング
★女滝沢(めたきざわ)森林浴歩道コースとは・・・ 秋田県湯沢市の小安峡地区にある、ブナやミズナラを主体とした原生林で、トチノキやヤチダモ、キリなどの巨木が見られる他、四季折々の山野草なども見ることができます。 |
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土産屋「さたつ商店」の裏から入っていきます。案内をしてくださった佐藤さんのお宅でもあります。
「このへんはムササビが新芽を食べるんだ」。 |
佐藤さんにとって、ここは家の裏山。なので、まるで庭を案内しているかのよう(国有林です)。 ハリギリ(センヌキ)。 |
別々の樹木の幹が癒着結合した「連理木」は、「一つの木と他の木とが連なって理(木目)が通じている」様子が、縁起の良いものとされています。 |
夫婦円満の信仰の対象としても知られている「連理木」ですが、幹の先にある枝は、それぞれで独立しています。 |
日本で4番目に大きいヤチダモ。 |
熊除けの棒を打ち鳴らす佐藤さん |
オウレン。 |
山ワサビ。 |
イワウツワ。 |
トチバニンジン。 |
民宿こまくさでの地産地消夕食 | |
今回も夏同様「小安峡の宿こまくさ」に宿泊。源泉掛け流しのアルカリ性天然温泉で、山中の泉でカモシカが足の傷を治している場を見て木こりが発見したという説があります。 |
秋らしく、きのこ三昧の献立が並び、散策後の疲れた身体に沁みわたります。もちろんお米は、昔ながらの天日干し(はさ架け)された「あきたこまち」の新米でした! |
◆2日目 | |
「ちねつあー」 ~小安峡大噴湯・川原毛地獄を散策~
★ちねつあーとは・・・ 秋田県湯沢市の地元・湯沢翔北高校の生徒さんの案内により、小安峡や川原毛地獄などの見どころを周る、「ちねつあー(地熱体感ツアー)」が行われました。 |
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湯沢翔北高校の生徒さんの案内で小安峡散策。 |
今年2度もこの「地獄釜」に来ることになろうとは…。 |
それにしても、今年二度にわたる小安峡大噴湯の散策。運動不足な大人は、「キツイ~!」のひとこと。その傍らで高校生も「この階段キツイよね~」「足つる~」。本当にキツイのかな?と疑問なくらい元気(笑)。 |
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800mもの踏み台昇降…。 |
小安峡大噴湯前で、記念撮影! |
標高差60m、皆瀬川に架かる川原湯橋。 |
川原湯橋から見下ろした皆瀬川。 |
小安峡の紅葉。 |
あぐり館みなせで行われていた「みなせ牛」のイベント。 |
ここでちょっと休憩~高原牛乳を味わおう~ 「あぐり館みなせ」にてショッピングの後は今回も「栗駒フーズ」見学。ここでも「秋の湯沢」を存分に味わいました!全国で初めて地熱エネルギーを利用し低温殺菌にこだわった牛乳は、一日およそ2.5tもの量がつくられています。
――栗駒高原牛乳は、ここがちがいます――※高橋社長の言葉、および配布資料より抜粋 ●牛乳は100度以上で高温殺菌してしまうと、成分が熱変化してしまい、飲んでも消化されにくくなります。高温殺菌しているのは、先進国では日本だけで、他の国では「特殊加工用牛乳」として取り扱われ飲用としては販売されておりません。ここでは65度・30分で低温殺菌した、牛乳の成分を壊さない「国際基準にあった製品」を販売しています。 ●原料乳を生産している皆瀬牧場の牛の飲み水は、塩素消毒された水道水は一切使用せず、山麓から湧き出る「天然の湧水」を飲ませています。また、牧場の畑で生産した自給飼料「青刈りトウモロコシ」を主食にしているため風味が良く、ほのかな甘みがあります。 ●朝、しぼり立ての原料乳をその日のうちに製品化し、厳重な品質管理検査を経た後、翌日には宅配できる新鮮さ。 ●もちろん、その牛乳から作られたヨーグルトなどの加工品にも、乳化剤や香料などの食品添加物は一切使用しておりません。安心・安全な原料だけで作られています。 |
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よどぎみは、「れんこんヨーグルト」を購入。アレルギーの方にはおススメなんだそう。 |
栗駒フーズ社長・高橋惇さんが自ら、工場内の説明をしてくださいました。 |
栗駒フーズと湯沢商業高校とがコラボし商品開発した、「栗駒高原みるくプリン」。パッケージにも注目! |
学生が考案した「うしねつ」と「ぽちねつ」は、今や小安峡の人気キャラ。おじいさん犬のイメージだそう(笑)。 |
川原毛地獄へ向かうバスの中、湯沢翔北高校の皆さんよりリコーダーの演奏をプレゼント! |
湯沢翔北高校の皆さん、丁寧な解説をどうもありがとうございました! |
地域の人と話そう。 ~若畑でのふれあい交流会~ | |
若畑集落の皆さんに再会。佐藤栄一さん宅で、ふれあい交流会。 |
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淡雪こまちの切りタンポを中心に、ヌキウチ(白いキノコ)、耳キノコなど珍しい旬のキノコが。 |
若畑集落の山栗。
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「現在、集落には33名が、10戸の家で生活しています。うち専業農家さんは3軒で、殆どは兼業。米の収量は年間約8~10俵。300年以上もの歴史がある若畑は昔、泥湯温泉へと至る街道筋で旅館などもあり賑やかだったと聞いています」と、佐藤さん。 |
雪囲いをしているお宅もちらほら出てきましたね、と言うと、「やっぱり、マメでねばな。毎年雪害ちゅうか、まぶ(雪屁のこと)でがっで窓ガラス割れんばかりだもんな」と、厳しい豪雪地帯ならではの冬支度についてお話されていました。 |
「この案内看板は10年程前、奥宮山さ登山に来る初心者用に、“集落に立ち寄ってください”という意味を込めて作ったんだ。10月上旬に行われる紅葉まつりに合わせてね」 |
佐藤家の皆さん。
一期一会の出会いと思っていた方々と再会できた喜びと、再会できると思っていた方と残念ながらお会いすることが叶わなかった今回の旅。その中で、同じ場所であっても夏とはまた全然違った表情を見せる自然の驚異とその力強さに、心打たれる良い旅となりました。 いつか今回の旅を振り返った時、きっと「行き交う年もまた旅人なり」と思い返すことでしょう。いま側に居る人々と共にその刹那の景色を見、季節の移ろいを感じ、同じ時間を共有することは、何事にも変え難く非常に偶然で有り難いことなのだと。
現地特派員 よどぎみ |
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