「石持ち占い」~横岡集落の年中行事~
「石持ち占い」とは、「男石」・「女石」と呼ばれる一対の平たい石を、片方の手だけでそれぞれ持ち上げ豊作を祈願するもので、にかほ市象潟町の横岡集落内にある稲倉宇賀神社(いなくらうがじんじゃ=下村の稲荷神社)で2月初午(今年は2/7)の夜、子供たちの獅子舞奉納後に集落の男衆(氏子)によって行われます。
神社に泊まり込んで祈る「夜籠もり」にも似ていますが(おそらく行事の原型とされており)、県内でも珍しい行事です。
■獅子舞練習(横岡集落自治会館にて) |
|
横岡集落自治会館での練習の様子。石持ち占いの前に獅子舞奉納をします。集落の子どもたちは、学校と連携して地域行事に参加しています。 |
齋藤治郎作の正一位稲荷と、齋藤八郎右エ門の薬師如来とが合祀された稲倉宇賀神社。 文献上、230年以上前から続いています。 |
|
|
冬囲いをした正一位稲荷神社。そして、集落内で唯一の中学三年生、齋藤樹くんの家の守り神でもあるのです。 ※以前「美の国あきた桃源郷をゆく」内「サエの神と鳥追い~横岡集落の小正月行事~」でも、 紹介させていただきました。 |
■獅子舞(横岡集落稲倉宇賀神社にて) |
|
真剣な表情で神官を努める、小学4年の佐藤悠斗くんにその意気込みを伺うと、 「自分の役をたくさん練習して、やっとできるようになったので、明日もがんばっていきたい」。 ――今日ではなく明日? 「今日もだけど(笑)、僕らの本番は明日。一日かかるんだ」との答え。 ちなみに、この神職の恰好は「たよ様」と呼ばれています。 |
獅子舞の風景。
|
翌2月8日は初午。子どもらだけで集落内を五穀豊穣・家内安全を祈って周り、各家々からお初穂をいただきます。 また、招き入れて獅子を舞う場合は特別に、弾んだお初穂がいただけます。 彼らにとっては大切な一日なのだそうです。納得! |
|
こちらは、翌日のお初穂をいただきに周った時の様子です。 上記写真は同じく取材で一緒になった、「秋田県のがんばる農山漁村集落応援サイト」の取材スタッフより提供していただきました。お疲れ様でした! |
■石持ち占い(横岡集落倉宇賀神社にて) |
|
まずは、腹ごしらえ。お神酒と共にあぶらあげや赤飯、煮物などの持弁当(郷土料理)が並び、和気藹々とした中での占いとなりました。 |
|
相手の方に稲荷を揃え、雄雌一対となった狐の前で互いに杯(お神酒)を飲み交わします。 |
石持ち用の石。「女石」は3kg、「男石」にいたっては約4kgほどの重さがあります。 |
このあと、順番に力比べが始まりました。 「女石はいいども、男石は滑るなや!」 |
片手で持ちあげるには、握力の他に掌の大きさがものを云うようです。 |
|
(写真左)「上作!上作!!」
(写真上)「俺なんて、二ついっぺんに持つね!」 …間違いなく、今年は大豊作でしょう! (実際、そういう結果となりました) |
昔は、若い衆が酒を酌み交わしながらこぞって石持ちに参加し、力を競い合う中で農家の後継者であることを誇ったそう。 「この行事は毎年初午の日にやるんだども、あまり早ぇば『火早い(ひばやい=火災の恐れがある)』って2週目とか次の午におつける(遅らせる)んだ。この神社も慶応の頃(150年程前)、火災さ遭ってっから」と、佐藤輝一さん。 日取りを気遣って行事を行うのが当たり前だった頃、若人は地域の神様に見守られながら力比べをする中で、集落で生きる知恵をつけていったのでしょう。 |
それぞれの家の敷地内に祠がある集落は、今では珍しくなってきました。
そういえば、よどぎみの祖父の家(能代)でも竜神が祀られており、中庭には鳥居のついた祠があったっけ…。
もう誰も祀ることなく、ひっそりと忘れ去られてしまうだけの祠。
けれど、祠はなくなっても、そこに人々が集い合って語り合った想いや願いは、ずっと忘れずにいたいものです。
(※)2011年1月、同横岡集落で行われたサエの神行事に関するよどぎみの記事「サエの神と鳥追い~横岡集落の小正月行事~」も、ぜひ合わせてご覧ください!
県央地区現地特派員 よどぎみ