(県南)大仙市 椒沢地域
大沢郷三地区 新「椒沢番楽」を楽しむ会 令和5年3月5日 大沢郷地区公民館
大仙市の椒沢地区に古くから伝わる伝統芸能「椒沢番楽(大仙市指定無形民俗文化財)」。毎年8月、盆の一日だけ獅子舞が演じられる風習は続いているものの、本来は16演目ある番楽で、約20年程途絶えていたと言います。長い年月を経て、この番楽を復活させようと地域住民やその仲間たちが、さぁやるぞと奮起しました。
練習を始めてから約3年。地元の公民館でそのお披露目会が行われました。
来賓や観客も多く会場に駆けつけ、大沢郷三地区ばかりでなく、もっと広い地域全体からのエールや期待がこの番楽復活に寄せられていました。
復活に要した3年の年月。コロナ禍もあり、練習の場を設ける困難もあったと聞きます。足りない楽器や衣装を揃え直し、練習に励んだそう。元々は、地域の男性のみが唄い手、舞い手、お囃子と役割を担い、無病息災や厄除けを祈願したものですが、人口減少という課題を抱え、継承には女性や地域外の住民を入れて取り組むことに地域内の理解があったそうです。国際教養大学の学生等、若者が地域を守る取り組みに直接関わりました。
舞い手、笛、太鼓、すりがねも初めての者ばかり。昔の動画を何度も見直し、譜面を起こし、高齢で番楽を退いた地域の先輩たちにも聞いての再現。聞こえてくるエピソードを思うと、復活への強い覚悟を想像しました。
大きな拍手の中、新しいメンバーを含む椒沢番楽保存会の皆さんが入場。緊張や気合い。それが伝わってくるようで、見ているこちらも背筋がピンと伸びました。
獅子狩り
獅子舞
舞の途中で頭を下げた客席を獅子頭が噛んでお祓いし、そしてまた舞を続けます。
前番楽
「前番楽」は、16演目ある中の基礎となる舞と言われているそう。今回一から練習し、20年ぶりのお披露目となった舞です。幕を揺らし後ろ向きで登場、そして他の演者にはないカラフルな衣装をまとい「ハッ」という掛け声に合わせ扇を返す。先に観た獅子狩りや獅子舞とは異なる雰囲気、勇壮でありながら親しみやすさを感じました。
3演目の舞を終え、鎌田精孝保存会長が「若い人たちがまじめによく頑張った。もっとたくさんの人に見てもらえるように今後も練習に取り組みます」と挨拶。
三地区のアドバイザーである岩手県立大の役重眞喜子准教授から、伝えることが困難な郷土芸能を絶やすことなく守り続けるためのアドバイスをいただきました。
お披露目会を終えた佐々木義実さんは、「前番楽の後に酉舞、三番叟、二人曾我、剣の舞など、まだまだ続きます。果たしてどこまで復活できるのか。やっとスタートに立ったばかり」と言います。
無形民俗文化財と呼ばれるように形ないものを再現するのはどんなに大変なことだったでしょう。私たち観客は、復活の舞に大きな拍手を送り、保存会に集まった仲間の結束力を目の当たりにしました。社会や時代の流れを柔軟に受け入れ、ここまで復活できた“新”椒沢番楽に今後も注目したいですね。
関連団体・関連事業
- 大沢郷三地区結々会(事務局:西仙北支所農林建設課内)
- 椒沢番楽保存会
- 秋田県 魅力ある里づくりモデル事業
マップは椒沢地域を指しています。
椒沢地域は、「守りたいあきたの里地里山50」に認定されています。
取材:NPO法人秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会