松館天満宮三台山獅子大権現舞
~松館菅原神社例大祭~

4月25日(月)鹿角市松館の松館菅原神社で例大祭が行われ、
県指定無形民俗文化財の「松館天満宮三台山獅子大権現舞」が奉納されました。
この舞の由来は、『正安2年(1300年、また治安2年(1022年)とも)、
京都北野天満宮から「天満大自在綱乗天神宮(ご祭神菅原道真公)」を勧請して崇め、
村中が万歳楽を唱えて舞い納めたのが起源とされています。』(保存会発行文書より)
現在も、松館天満宮舞楽保存会(戸舘昌則会長)によって保存継承されている伝統芸能です。
 
   

舞の奉納を前に、社殿内で神事が行われる

地元の幼稚園児が毎年訪れる

社殿で神事が執り行われている間、地元の女性と話をしていると、
昔の祭りの様子を教えてくれました。生まれも育ちも松館だというその女性は、
「昔はもっと人も多かったし、露店も2軒は出ていたね。
今は地元の幼稚園の子どもたちだけだけど、小学校の子どもたちも祭りを見に来ていたし。

   

舞を見に、集落内外から人が集まる 演者も囃子も、白装束で山伏の格好をする
お祭りの日には、よそに住む親戚もこの集落に戻ってきて、みんなでお祝いをしたものだった。
そういうよそから来る子どもたちが、きれいな服を着て来るでしょ、
すると地元の子どもたちは、一旦うちに帰って正装してくるの。そういうものだったのよ。」
女性は、「今日のわたしは普段着だけど」と笑いながらも、
その首には鮮やかなスカーフが巻かれていて、
今もそのきちんとした気持ちが薄れていないことがうかがえました。
   

お湯立ての火を燃え立たせる「青柳舞」       神霊を仰ぐ「榊舞」
このような集落の祭りで必ず持ち上がる「後継者」の課題についてうかがってみると、
「人は減ったけど、舞を継ぐ人がいなくなるってことはないね。わたしはもう80歳になるけど、
覚えているうちでも(祭りを)やらなかったっていう年はないんじゃないかな。
ずっと続いてきたものだもの、そういうものなんでしょ。」
女性のその話しぶりには、この土地にこの祭りがあることが決して特別なことではなく、
当たり前にあるもの、至極当然であることだという気持ちが垣間見えていました。
   
   
風邪をひきませんように」と唱え、
子どもの頭を獅子頭でかむ
「獅子権現の霊力授与」
祭場の御幣、
お湯立て神事に使った笹の葉は、
無病息災、学問成就のお守りとなる
帰り道、行きあった男性に地域にとっての祭りの意味を問うと、男性はこう答えてくれました。
「この祭りはこの集落では一年で一番早いお祭りでしょ。俺は農家ではないけど、
農家にとってみれば一年の稔りを祈るというか、そういう願いを込められているんだよな。」
地元の建設業に従事しているというこの男性は、神社に3つある鳥居の建設にも携わっていて、
さらに、この祭りの保存会の一員でもあるそうです。
「祭りに来る人は減ったけど、保存会の人は結構たくさんいるんだよ」と笑っていました。
神事に関わるだけが保存ではなく、その周りの環境を整えている人たちもまた、
伝統の祭りを支えるため欠かすことのできない大事な力なのだ、ということを改めて感じます。
   
秋田県の伝統野菜のひとつ「松館しぼり大根」の生産地である、ここ鹿角市八幡平松館地区。
米、葉タバコ、しぼり大根などが盛んに栽培されているといいます。
今年の雪解けは遅く、最近続いた雨でようやく田んぼが顔を出し始めたのだそうです。
岩手県との県境に位置する八幡平の裾野にあり、一年の多くをたくさんの雪と共に過ごします。
春の訪れを喜び、短くも暑い夏を乗り越えて、みなで収穫の喜びにひたる秋を迎える。
60戸余りの人々が、その喜びを共に分かち合うためのものが、
この祭りであり舞なのかもしれません。
「松館の天神様」と慈しみを込めて呼ぶ人々に、今年も天神様の恵みが舞い降りますように。

※秋の例祭は毎年10月25日午前。権現舞の奉納が行われます。

県北担当 やっつ