なまはげ柴灯まつり
大晦日になると、男鹿半島の民家になまはげがやってきます。なまはげとは、男鹿に伝わる民俗伝統行事です。鬼のようななまはげ面を被った若者が、出刃包丁を振り回し、「悪い子はいねがー」と威勢の良い声を上げながら訪ねてくると、たとえ子どもが押入れに隠れていても引きずり出して、悪い子は山に連れて行くぞと凄みます。家の主人はなまはげをお膳や酒で丁寧にもてなします。なまはげは主人に田畑の様子や家族の健康について近況を尋ね、その家族の1年間をねぎらい、新しくやってくる1年間の除災招福を祈り、山へ帰って行きます。
「なまはげ柴灯(せど)まつり」は毎年2月に同神社で開催されます。この祭りは、男鹿市北浦の真山神社で1月3日に行われる伝統的な神事「柴灯祭」と組み合わせたものです。このイベントでは始めに、神事舞が行われます。神楽を奉納する湯の舞と、釜に沸かされた湯を湯ぼうきで参列者に振りまき清める鎮釜祭という2つの男鹿市独特のものです。「なまはげ入魂」では、これからなまはげに扮し民家を回る若者たちが「鬼神」となるために参拝し、衣装を清めます。その後、大晦日のなまはげ行事の再現が行われます。秋田弁で再現されるなまはげと主人の問答は、地元の参列者の笑い声を聞く限り、ユーモアがあっておもしろいです。なまはげ踊り、なまはげ太鼓の迫力あるパフォーマンスのあと、いよいよなまはげが山から下りてきます。松明をかざしながら列をなして会場を練り歩き、勇壮に行進します。このときなまはげの衣装から落ちたわらは、厄除けになり縁起が良いとされています。祭りの最後には、市内の地域ごとの特徴あるなまはげたちが会場に乱入してきます。なまはげは参列者と記念撮影をしたり、子どもをかっさらって大きな声で驚かせたりしながら、人々との交流を楽しみます。
会場内には無病息災、開運招福の意味があるといわれる紫灯火という大きな火があり、参列者は御利益のためか暖をとるためか周りに集まって、男鹿の伝統を眺めます。髪の毛に染み付いた柴灯火のにおいが、この地の伝統を大切にする人々の賑わいを思い出させるようでした。
私はちょうど秋田の大学の授業でなまはげについて教わったところだったので、実際に見るのはとてもワクワクしました。なまはげが山から下りてくる部分はとても厳粛な雰囲気でした。たいまつをかかげながら山を行進してくるから初めは怖かったです。また、なまはげに追いかけられて捕まえられて親から引き離されている子どもたちを見て、ちょっとかわいそうにもなりました。最後になまはげと写真を撮ることができて、秋田での楽しい生活を思い出すきっかけになるような、特別な思い出になりました。