平成30年9月21日(金)~23日(日・祝)
グリーン・ツーリズム(以下GT)に興味があり、本格的に秋田県に移住し、農家民宿や農家レストラン等のアグリビジネスの起業を考えている方を対象に、起業・経営に係る知識を習得できるよう講義や就業体験、起業プランの作成等を行う実践研修を行いました。全3回(2泊3日×3回)の研修のうち、1回目を合同研修として研修生全員参加で行いました。残り2回は希望の研修先(農家民宿、農家レストラン)でマンツーマンでの個別研修となります。
<主催:秋田県/運営:NPO法人秋田花まるっGT推進協議会>
<1日目>由利本荘市
講義・ワークショップ
1日目は、由利本荘市総合開発センター「有鄰館」での座学です。「進化するGT」のタイトルで講義をしてくださった、秋田県立大学の荒樋豊教授。当協議会のアドバイザーでもあります。秋田のGTにも触れつつ、その意義や農家が取り組む理由等を学びました。
続いて、秋田県立大学教授・NPO法人地産地消を進める会 代表理事の谷口吉光教授によるワークショップを行いました。「自分資源の棚卸し」と題して、じっくり自分と向き合う時間を設けました。「自分にできること」と「秋田で暮らすヒント」が他者からの意見も交えて繋がる感覚、新発見もあったのではないでしょうか。
各農家民宿へ
その後、東由利地域にある農家民宿2軒に分宿し、農家の皆さんと語らう時間を過ごしました。男性陣は、弁天の宿(髙橋京子さん)にお世話になりました。
女性陣が宿泊したのは、農家民宿・産直やしお(大坂日出雄さん、真理子さん)です。大坂さんご夫妻も由利本荘市に移住し、農家民宿と直売所を開業した方です。
<2日目>由利本荘市~にかほ市
情報提供
2日目、直売所でもある“産直やしお”の朝仕事を見せてもらいました。
「有鄰館」で由利本荘市仕事づくり課の播磨さんより、移住・定住情報について教えてもらいました。後継者不足に悩むレストラン等の個人事業主が移住希望者に事業を引き継ぐ事例紹介もありました。
食育工房 農土香
一行は、にかほ市にある食育工房 農土香(のどか)に向かいました。地元に豊富にある旬の食材をたっぷりと使用した地産地消料理を提供する農家レストランで、オーナーの渡辺広子さん(写真:前列右)は、米粉ピザ作りの体験等を通じて食育活動にも力を注いでいます。
農土香の渡辺勇さん・広子さんご夫妻。お二人の穏やかな人柄がお店の雰囲気と重なります。元JA職員だった渡辺さんご夫妻の思いのひとつに、欧米化した食生活を見直し、「米を主食の座に」という考えがあります。その考えや想いを表現したのが「農土香」だとお話してくれました。「料理で想いを表現し、お客様に伝えている」という渡辺さんのお話には説得力がありました。
早速、研修生の皆さんは、米粉ピザ作りに挑戦です。さらさらだった米粉にぬるま湯を注ぎ、力いっぱいにこねました。また、オーナー秘伝の調理法を聞き逃すまいと調理しながらメモ取りにも一生懸命でした。
昼食は、ご主人の手打ちそばがメイン。そばに添えられたおかずは、お椀いっぱいの煮付けに、旬の食材を玄米粉で揚げた天ぷら。特に、にかほ市の特産品である「北限のいちじく」の天ぷらとマリネは、そのアイディアも美味しさもインパクトがありました。
米粉ピザもおいしく焼きあがりました。素材の味に加え、米粉のもちもち食感も美味しさを増幅させます。渡辺さんの想いが詰まった数々の料理に大満足でした。
山遊庭の森
一行は農土香を後にし、由利本荘市で農業体験の受入をしている「山遊庭の森」の阿部重助さんを訪ねました。
「山遊庭の森」の阿部重助さんとお手伝いにきてくれた「農家民宿・産直やしお」の大坂さん。阿部さんの案内で早速、山の中へと進みました。
山道沿いの斜面には、山菜のミズが群生していました。研修生の皆さんも目が慣れてくるとミズをたくさん見つけて、その場から離れられなくなるほどでした。
ミズと同じようにミョウガもたくさんありました。既に大きくなったミョウガの葉をかき分けると地面からひょっこりとミョウガが見つかります。採取もしやすく夢中になりました。
山ぶどうです。小さい粒にさわやかな酸味がぎゅぎゅーっと詰まっていました。
こちらは、あけびです。近隣の保育園の園児たちも収穫体験にやってくるそうです。
横積みにされたほだ木に「なめこ」を発見!!つやつや光るなめこを見つけてウキウキしました。収穫はもう少し先になるそうです。
山遊庭の森には、地域の園児や小学生をはじめ、移住希望者も体験にやってきます。何を隠そう、「農家民宿・産直やしお」の大坂さんも移住先を探しているときに、ここを訪れたんだとか。豊かな自然に包まれる感覚、そして山の幸を見つける楽しみ…魅力にあふれる場所でした。
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一行は2日目の行程を終え、それぞれ1日目と同じ農家民宿に宿泊しました。1日を振り返ったり、宿のオーナーとの語らいの中で、改めて将来の目標について考えたり、見直すきっかけ、ヒントになる時間を過ごしたのではないでしょうか。
<3日目>由利本荘市
農業体験
3日目は、「農家民宿・産直やしお」で1日を過ごしました。宿泊した女性たちは、朝の直売所の仕事のお手伝い。出荷されてきたミョウガの袋詰めをしていました。
秋晴れに恵まれたこの日、稲刈り体験を行いました。指導してくれるのは、「農家民宿・産直やしお」の大坂さん(左)とご近所に住む小松幸男さん(右)・和子さんご夫妻です。「たつこもち」という品種のもち米の稲刈りをしました。
腰に巻いた藁を使って、刈り取った稲の束ね方を教える和子さん(中央)。慣れない作業に汗をかきながらも、数を重ねるうちにコツを覚える研修生の皆さん。
男性の皆さんはバインダーを使った稲刈りにも挑戦しました。機械を使う便利さを楽しさと一緒に味わった様子でした。
そして、刈り取った稲を軽トラックで田んぼに運び、ハサに掛けていきます。天日干しで自然乾燥させます。
一通りの作業を終えて、大坂さんたちが準備してくれたお茶や焼き芋で「たばこ(おやつ、休憩)」のひと時を田んぼのど真ん中で過ごしました。作業後のこの達成感は、農村でしか味わうことができない特別なものでしょう。
昼食作り
昼食づくりは、火おこしから!薪割りもしました。
メインは郷土の味のひとつ、いものこ(里芋)汁です。
青空の下、ハサ掛けのある風景をバックに「いただきます!」。これも貴重な経験になったことでしょう。
協力して作ったいものこ汁に、新米のおにぎり。農作業体験後だからでしょうか、おにぎりが一層おいしい。手間暇かけた分だけ、農産物への愛情も真心も生まれ、それが美味しさとなって返ってくる気がします。
3日間の研修は、GTを取り入れた起業を目指し、構想を練っている段階の皆さんに実践の場を提供する良い機会となりました。本研修は、前述のとおり全3回実施します。初回である今回は合同研修であり、残り2回は研修生がそれぞれ興味のあるコース(農家民宿コース、農家レストランコース)で、更に実践の場を踏みます。
以下、参加した研修生の感想です(抜粋)。
- 1日目のワークショップ「自分の資源の棚卸しシート」は、自分の強みについて振り返ってじっくり考える事が出来、とても良いアドバイスを頂きました。
- 農家レストランの研修で、自分の理想から実践するという「志」の大切さを理解しました。米を存分に活用し、自らの理想を実現したことに多くの自信をもらいました。
- 農家民宿・産直やしおでは、お二人から二人三脚で地域に溶け込んで交流していく方法のヒントと地元の良さが伝わりました。
- 畑仕事の研修など、実務経験を増やしてほしい。今後は個別研修で経験を積んでいきたい。
主催(秋田県)より
農業は、農産物を作って売るだけではない。
農業体験の提供をビジネスとしたり、自分(地域)で作った農作物を調理・加工して販売するなど、様々なビジネスの可能性があります。
このようなアグリビジネス起業により、移住・就業・転職等に興味のある方、2019年度以降も、このような研修を開催していく予定としていますので、参加を希望する方は、お気軽にお問い合わせください。
「アグリビジネス起業実践研修」に関するお問合せ
秋田県 農林水産部 農山村振興課TEL:018-860-1851 FAX:018-860-3815
E-mail:nosanson@mail2.pref.akita.jp