農家民宿「重松の家」春の仕事(2011年4月~5月)
グリーン・ツーリズム活動の柱となっている、受け入れ農家さんたち。彼らの本業である農作業の様子を、秋田市上新城にある農家民宿「重松の家」の一年を通してご紹介します。今回は、田植え準備から実際の田植え作業に至るまでの様子を「春の仕事」として、風光明媚な農村風景とともにご紹介します。
◆育苗作業 |
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田植えの前の重要な仕事である、発芽させて苗を育てる「育苗」の作業。土盛りをした育苗箱を播種機の方側から入れてやると、反対側から種が蒔かれ水を吹き付けられた箱が次々と出てきます。これを順番に繰り返し、育苗ハウスにて生育し、田植えを待ちます。 |
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山と積まれた育苗箱。民宿向かいの社会福祉法人「秋田福祉協会 小又の里」の方々も、農繁期にはお手伝いに来てくれています。 |
1日の目安が、およそ1,000箱で、土は重博さんが若美から2tトラックに山に積んで買い付けたものだそうです。 |
今回作付するのは「あきたこまち」。前回使用した「めんこいな」の種(籾)の残りを丁寧に取り除きます(混ざってはいけないため)。「本来薬撒く用だども、液体入れねで、こうして空気出して掃うなや」ということで、重博さんのこの出で立ちです。 「ブフウッ」という音と共に空気を吹き付けます。 |
籾を播種機に投入。この「あきたこまち」の籾は、「重松の家」のオーナー・佐藤さんの田んぼで昨年採れたもの。発芽するまで大切にハウスの中で保管したので発酵したようなにおいがします。 育苗箱にして500箱以上、1日およそ乾籾で10kg×2袋分使用します。 |
よどぎみもピンクの野良着で一緒に作業。へっぴり腰ですが、あしからず…。 |
全部で育苗ハウスに4棟分を用意するのですが、今回は1棟分のみとなりました。 |
育苗箱を置く前に、雑草被害に遭わないために黒いビニールシートを敷き、4隅を杭で打ち込みます。 |
重博さんが軽トラを奥まで移動させると作業が早いというので、ベニヤ板を敷いてハウスの中まで誘導。 |
ようやく敷き詰め作業。「たんだ置ぐだけだと思ったら、結構な重労働だべ?」ニヤリと、重博さん。 |
ちょうど3週間後の苗はこのような状態でした(代掻き作業の頃)。さらに10日後くらいで田植えとなります。 |
◆代掻き作業 |
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田起こし後の田んぼに水を張り、稲株や土を掻き混ぜ細かくし、田んぼの表面を均す作業が「代掻き」です。「天候のせいで、今年は何から何まで作業が遅れてる」とのことなので、荒天でも進めます。 |
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「代搔きは機械でやるんだども、あんまりぬかるんでるもんだから。こうして水調節するんだや」 |
雨で作業が難航しても、二人の連携は慣れたもの。 |
田んぼの周辺にワラビが。「おらい(自分の家)の土地だから、採ってあんべ」とのお言葉に甘え、重博さんがあくせくと代搔きをしている横で、祐子さんとよどぎみは山菜採りに没頭。 |
「秋田おばこと言えば?」フキも採る祐子さん。 中芯の葉っぱがクルンと、まくれているのが柔らかいそうです。 他にコゴミなども採りました。 |
本日の収穫物。たくさん成っているからといって、全部採るようなことはしません。山の神様に感謝して、少しいただきました。 |
重博さん、遅くまでお疲れ様です…。 |
◆田植え作業 |
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5月25日、いつもよりちょっと遅めの田植えが始まりました。 |
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あの時植えた苗は、こんなに立派に育ちました。 |
連携プレーで、育苗箱を積みます。 |
田植え機の操作をする重博さん。 |
間隔を考えながら植えていきます。 |
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機械がぬかるむ隅は、人手で。 |
別の田んぼに移動しま~す! |
セリ科の山菜で、根が漢方として知られている「日本人参(コシャク)」の花です。山形県庄内地方では、茎の部分を「野にんじん」として切り合えなどして食べられています。 |
こちらの田んぼでは、あちこち地下から水が湧き出てきています。よくあることだそうで、水量を調節する場合もあるのですが、今回はここには植えない方向で残しておくことになりました。 |
引き続き、作業です。 |
お疲れ様です! |
◆体験受け入れの様子 |
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5月27日、八橋にある白百合保育園の年長組の園児を受け入れ、ひとつの体験用田んぼで田植えを行いました。ここで植えるのは「絹のはだ」というもち米です。 あらかじめ重博さんが田んぼに格子状のカタを付けていき(下記写真)、園児らに田植えの仕方を教えました(右記写真)。秋田弁丸出しのお父さんの説明に、周りの大人は大笑い。「(園児らが)どこまで理解できたかは判らないが、まぁ、実際やってみれば体で覚えるべ」と、お父さんも苦笑い。秋田弁でのお話、あったかくて良いと思いますよ~。
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子どもたちは怖がることなく、喜んで田んぼに足をつけます。 |
案の定、転んで泥だらけ!でも、笑っているから楽しいんだね。 |
何か発見したかな? |
「アメンボ!」見つけるやいなや、大騒ぎ。 |
中でも群を抜いて作業が早い子も(上記写真左側)。競争ではなかったけれど、間隔をあけちゃんと植えていました(右記写真)。 園長の石田ミヨ子さんは、「ここでは3年程ですが、それ以前から15年以上、太平など地元の農家さんのもとで園児による農業体験を続けてきました。この体験を通じて少しでも農家さんの苦労を知り、“物を大事にする”ことを学んでくれたらと思います」と、お話してくださいました。 今日、何かひとつでも「心の収穫」を持ち帰ってくれていたらいいですね。そしてこの場所で田植えをしたことが、大人になった時に彼らの思い出の日として生かされますように。 |
真剣な表情で黙々と作業をこなす園児。 |
「苗ちょーだい」 |
残りは、重博さんが、田植え機で補います。 |
゜・*†:☆:†*・゜ 重 松 の 家 の 春 の 花 た ち ゜・*†:☆:†*・゜ |
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ヒヤシンス。 |
日陰に生えていた福寿草を発見。 |
カタクリ。 |
ギョウジャニンニク。 |
花キャベツ。食べられませんが、あまりに美しかったので観賞用として栽培されていました。 |
そして…どこまでも続く、バッキャ(フキノトウ)の大群!!すごいですね~。 |
民宿庭の、遅咲きのチューリップ。 |
錨草(いかりそう)。 |
二輪草(にりんそう)。 |
えびね。 |
来る人を、いつも温かな笑顔で出迎えて下さる、農家民宿「重松の家」のお母さん・佐藤祐子さんとお父さん・重博さん。いつもありがとうございます。今回もお忙しい中、大変お世話になりました~! |
【おまけ】佐藤家の昼食。山菜づくしでした! 「山菜の季節は、ふつうの野菜はそんたに(あまり)食べねな。どうも味が薄く感じられて」と、祐子さん。なるほど~。 |
「農繁期が過ぎたら、どこか(当協議会の)会員さんのところに出掛けて、交流をしたい」と、祐子さん。「『弁天の宿』の高橋京子さんのところには、早々に伺ったことがあるんだけど」とのことで、その理由は、祐子さんご自身が東由利のご出身だから。京子さんとは1歳違いですが、当時から面識はあったようです。しかも驚くなかれ!祐子さんの夫の重博さんは、農家民宿「惣之助」の千葉惣永さんとは、農業大学園の時の同級生で、農家レストラン「雅庵」の福岡雅子さんとは、何といとこなのだそうです。当時東由利で盛んだった簗(鮎)釣りの思い出とともに、重博さんが懐かしそうにお話してくださったのが印象的でした。 農家であるが故に、とでもいうべきか、秋田県内狭しというべきか…いずれにせよ、人と人とはどこかで必ずつながっているのだなぁと改めて思ったのでした。 県央地区現地特派員 よどぎみ |
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✿ 秋 田 市 上 新 城 の 豊 か な 風 景 ✿ |
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「冷水井戸っこ」は、ここが「保多野村」だった頃から、住民の生活用水として愛されてきました。 |
この湧水はまろやかな軟水で、お茶やコーヒーはもちろん、炊飯に使用すると美味しいそうです。 |
(上記写真)大保地区にある平種柿の木。このあたりは、柿の木が多いです。
(右記写真)タラの木。タラの芽が生育すると、このぐらいの大きさの木になります。
(下記写真)上新城の田植え後の風景。いつまでも続いて欲しい、大切な風景です。 |
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住所 秋田市上新城小又字田中13 ※「卵かけごはん」は、宿泊者のみに振る舞われます。 |