秋田県といえば、ナマハゲ。ナマハゲといえば男鹿。
…ですが、ナマハゲに似た行事というのは実は秋田県内のあちこちにあります。
能代市浅内のナゴメハギ、にかほ市象潟町小滝のアマノハギ、秋田市豊岩前郷のヤマハゲ、同じく秋田市雄和平沢のヤマハゲ・・・など。
そうそう、山形県遊佐町にはアマハゲがありました。他、新潟県村上市や石川県の能登半島にも似たような行事があるそうです。東北日本海側の地域では、今も小正月行事として大切に伝えられているんですね~。
他の地域にも幾多あるようですが、いずれも担い手不足で惜しくも途絶えてしまったり一時中断したりと、存続事情も様々…。
秋田市上新城小又にある農家民宿「重松の家」では、この小正月行事・ナマハゲに合わせた餅つき体験イベント(秋田市農林部主催)が、今年も開催されましたよ~!
青空の下、このまっすぐ通った一本の圧雪された農道の先に、農家民宿「重松の家」はあります。
家の前にあるビニルハウス前に車を停めると、いつも決まってこちらに寄ってくる放し飼いの猫がお出迎えしてくれました(家の中には入れていませんので、ご安心を!)。
昨年のこちらのブログでも書きましたが、秋田市上新城のナマハゲは年の瀬ではなく、小正月行事の1月15日と定まっているので、今年は平日となりました。
ナマハゲが来るのは夜遅く。大人が15人に子どもが8人。今年は昨年よりも子どもが多いなあ。8人の小さなお客さんは果たして、ナマハゲを怖がるのかしら?それ以前に、「ナマハゲ」だと認識できるのかなぁ?などと、大人の参加者の方の方がソワソワ(笑)。
まずは恒例、もちつき体験!木造りの杵をよいしょと持って、「寒い~」とほっぺを赤く染めながらも、大人も子どもも満面の笑みでぺったんこ!
餅つき後は、お楽しみの試食会。
お馴染み、あんこにきな粉、砂糖ゴマ、つゆもちです。
「重松の家」のご厚意により、ナマハゲに供されるごちそうが参加者に振る舞われました。
その殆どが地産地消、佐藤家の田んぼや畑で作られた米や野菜、こしらえた味噌などで味を付けた、祐子さんの愛情がたっぷり詰まった郷土料理です。
特に西明寺栗の渋皮揚げは、新感覚の美味しさでした。あと、お馴染み、ドジョウの唐揚げ(写真中央)は臭みがなく、塩コショウがきいていて、毎度やみつきになります。
夜、7時。食事をしながら和気藹々と談笑している参加者たち。
襖の奥から「うぉ~!」という雄叫びが・・・。
威勢よく乗り込んできたナマハゲにびっくりしたのか、突如泣き出す子どもたち。
そうそう、この反応!小さな子どもたちは、親になだめられると、泣きべそをかきながら小さな瞳で恨めしそうにナマハゲを睨みます。
祐子さんが奥の部屋からお神酒や馳走の入ったお膳をナマハゲの立ち位置まで運び退座、重博さんがお膳を勧めながらいつもの口上を述べました。
ナマハゲが置いていったお札には「諸願祈祷」と書いてあります。万事、諸々に効くお札のようです(笑)。
後で、重博父さんは「死ぬまで元気に面白く生きたい」と、お話の中でおっしゃっていました。
昔は地主の家や大きな農家には、“若勢”や“めらし”など、家事やお手伝い専門の人々がいたそうです。佐藤家にも例外なく居て、その人たちとは中々お膳を共にするなどということはなかったそうですが、せめて盆正月くらいは一緒にお酒を、ということで地域のお寺さんが気を利かせ宴会が行われたという逸話もありました。重博さんの小正月に関する思い出話から、親兄弟、子ども、友人が元気で楽しく、仲間意識を持って元気に生きることが大切、命あっての仕事だ、ということも教わりました。
親子3代で参加した秋田市将軍野の小林さん。おばあちゃんは孫の顔を見ながら「懐かしいですね。実家が(秋田市雄和)椿川なのですが、こちらのナマハゲは途絶えてしまいましたから。こういった行事は何とか残して欲しかったですね」と、お話してくださいました。
そういえば、秋田市雄和の下黒瀬地区のやまはげは、地域の青年会OBらが再び立ち上がり、約5年ぶりに復活したとか。そこには、「子どもたちに見せて、伝えたい」という住民の願い、思いの強さがありました。
上新城のなまはげは、来年も地域の子どもたちや人々を見守りに、山から降りてくるでしょうか…。
協議会事務局