秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会ブログ

初夏の訪れに思い出すあの風景、あの人々。

   由利高原鉄道鳥海山ろく線「七夕列車」
   「観光ユリ園リリーワールド」

 

由利本荘市の“由利高原鉄道鳥海山ろく線”で、七夕の期間中特別運行の「七夕列車」があると聞き、羽後本荘駅より早速乗車。
 仕事でもプライベートでも幾度となく由利本荘市に訪れているが、“由利高原鉄道鳥海山ろく線”に乗車するのは初。
 列車での移動とは、不思議だ。
 知っている土地がどこか遠い地に感じ、何となく小旅行気分になって向かうことができる。



 羽後本荘駅の一番はずれ、「のりば4番線」ホームに停車している「七夕列車」。
 「観光ユリ園リリーワールド」の近くの“西滝沢駅”で降りるため、外観写真等を撮るのには今しかない。
 外観を観察・撮影後、10:50の矢島行きに乗車。
 

車内は満員御礼。
 おしゃべりしながら目を細めて短冊を眺める女性たち、親子連れも目立つ。
 「七夕列車」の最終日だからか。
 

乗車したチビッコには、金平糖のプレゼントがあった。金平糖は星形、七夕に似つかわしいお菓子だと思う。
 天井いっぱいに散らされた、色とりどりの短冊とともに煌めき、人々の願いを吸収しているかのようだ。
 

「何のお願い書いたのかな?」おばあちゃんと仲良くお話しながら、楽しそうに乗っている姉妹に聞いてみた。
 「お花のかんむりがほしいです」ロマンチックなお願いをした、佐藤ここみちゃん(左)。
 「はやく補助輪なしの自転車に乗れますように」と言うのは、お姉ちゃんのりりかちゃん(右)。
 いつまでも小さな子どものままではない、リアルな成長過程が垣間見えるお願いだ。
 

乗車して約1時間後、西滝沢駅で降車。
 木立の横に、自然と共存しているかのような駅。
 

秋田には、小さいながらもホッと心が和むような駅が多いように思う。
 その中でも、特に鳥海山ろく線上の駅は“木造・瓦屋根”と、統一感がある。
 このあたりは建造物として瓦屋根のある割合が多いためだ。

 

と、ここで滝のようなスコール!
 しかし駅には珍しく、急な雨でも安心“傘の無料貸出サービス”があった(※バスでは見た事があったが)。助かった!とばかりに手に取り、次なる目的地に歩きだす。
 

歩くこと約10分・・・最後の1本の傘を借りて少々罪悪感。
(帽子もタオルもあるし、何とか切り抜けられそうだ。)「やっぱり返してこよう」と、引き返す。
 のどかな田園風景に降り注ぐ雨を横目に、「観光ユリ園リリーワールド」へと向かう。
 

受付のテントでは人々が集い、“たばこ”のごとく休憩を取っているのが見える。
 声掛けを躊躇するも、あたりは田圃。
 遮るものもなく、近づく人間は十中八九見つかってしまう。
 

「いいどさ来たな~、まんずかだれ!」タイミングを狙ったわけではないが、昼食のお仲間に入れてもらうことに。
 赤飯にうどん、そして五城目から来たお客が持参した湧水。
 初対面々が集えば、会話に花が咲く。これも、雨のお陰ではないか…。
 

晴れるのを待っていたら何時になるか判らず、カメラの設定に苦心しつつも撮影。
 マクロで撮影するため接近すると、むせかえるような香りが鼻の奥を突く。

 

ユリは、栽培が難しいのだという。
 土を起こして球根を採ることが必要。
 それに加え、雑草を採ったり病気が付かないよう絶えず気を配るなど、地道かつ入念な手入れを怠ると、綺麗に咲かないそうだ。
 

この、至極手のかかるユリ達を殆どお一人で、わが子のごとく正に手塩にかけて育て上げ、沢山の人々の心に“美しいユリ園”の思い出を残してくれたユリ農家の佐藤忠三さんは今春、お亡くなりになられた。
 リリーワールドの管理者として、欲しいという人には快く譲ってあげ、ご自分の損得よりも人々の目を楽しませることに熱心だったという。

 かつては花々を見ていると、気さくに話しかけてくる佐藤さんの笑い声があったに違いない。
 しかし、リリーワールドは、残念ながら今年で閉園となる。
 忠三さんの妹の鈴木ヒサ子さんは、「兄のまっすぐな想いを、誠実に継いでくれる人がいらっしゃれば別ですけど…、」と、複雑な表情を浮かべる。
 今後、このユリ畑はどうなるのだろうという不安、お兄さんの思いを誰かに継承させたいという一抹の“祈り”…そのようなものが見てとれた。
 ユリ達は、そんな自分たちの運命を知ってか知らぬか、主不在の今年は気合いで咲いているように見える。


 取材が終わるような頃、さぁっと雨があがった。
 帰りは“西滝沢駅”の一つ手前の“久保田駅”より鳥海山ろく線に乗車、羽後本荘駅へ。
 さえぎるものが何もなく、遠くから列車が近づいて来るのが判る。
 そして音。リズミカルな音でもって接近を知らせてくれる。
 鈍行列車のため、決してけたたましいわけではないが…。
 その音が目の前で停まった時、思わず涙ぐんだ。
 なくしたくない景色がある。
 残していきたい人の想いがある。
 それらを少しでも伝えていく義務が、私たちにはある。
             県央地区現地特派員 よどぎみ


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美の国秋田 桃源郷をゆく
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~線路は続くよどこまでおまけ~

 線路は、目的地へと希望を乗せて上る、一筋の梯子(はしご)に見える。

 旅の楽しみは、ここでしか押せない観光スタンプ。 

2010年7月15日08:30 | 県央情報 | Trackbacks (0)

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