秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会ブログ

マタギのふるさとを歩く その2「根子マタギ」

北秋田市阿仁根子集落のほぼ中心部に根子公民館があります。
玄関を入ると、大きなガラス張りの展示スペースに、
カモシカの毛でできた防寒着や錆びた鉄砲、
木のつるで編んだ袋などが所狭しと陳列されています。
根子マタギのシカリだった佐藤富松さんが実際に使った
マタギ道具と装束の数々です。
息子である富久栄さん(82)は、
今は亡き父・富松さんを「おとなしい人であったけれども、
マタギのことや地域のことの掟なんかはとても厳しい人であった。」と話します。
その顔には、父に対する尊敬と誇りがあふれていました。
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富久栄さんは、根子唯一の現役のシカリです。
シカリとは、マタギ言葉で長・リーダーのこと。


モニターツアーの中盤、富久栄さんがマタギ語りを聞かせてくれました。
その話し方はとても穏やかで、
しかし、長年シカリを務めてきたことを感じさせる独特の説得力を含んでいました。
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■1日に4頭!自身最高記録
富久栄さんは、22歳の時に父の跡を継ぎシカリになりました。
自分で1から計画を立て、セコ(獲物を追う人)たちに指示を出し、
無事に狩りが成功した時が一番達成感を感じるのだそうです。
ある時、4人の仲間を連れて山へ入りました。
一頭を追い込み、鉄砲で狙います。
しかし、その弾はクマをしとめることはできず逃がしてしまいました。
手柄なく村へ引き返す富久栄さんたち。
「どうしようか迷いましたけれど、あいつ(クマ)も傷を負っているから、
そう遠くへは逃げられないでしょう。明日もう一度挑戦しよう、ということにしたのです。」
と当時を振り返ります。
次の日猟場へ出かけると、昨日の獲物は難なく仕留めることができました。
その帰り道です。
小熊2頭を連れた親子のクマを仲間が見つけました。
一瞬追うかどうか迷いが頭をよぎります。
しかし、「よし、やってやろう、と。」
マタギとしての血が騒いだ瞬間でした。
一日に4頭。富久栄さんが今までで一番多く狩りをした思い出の日です。
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■マタギとして生きるということ
代々マタギを継承する家系とはいえ、今は昔。
極寒の中獲物を追うこの「マタギ」という仕事を、
イヤだと感じたことはないのかな、と不思議に思い、
失礼を承知で思い切って聞いてみました。
すると、「嫌になったことはないですよ、そういうものだと思ってきたから。」

「山に入ると、30分が10分や15分に感じるくらい集中するんですよ。
寒いとやっぱり大変なんだけれども、クマを追っている時は
打つのが楽しみだから、寒さも忘れてしまいます。」と
マタギの楽しさを頬を緩めながら語ってくれました。
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■マタギ発祥の地
狩りの時期、長く家を空けて猟に出るマタギを、旅マタギといいます。
根子マタギの人たちにはその旅マタギが多く、
遠くは長野や新潟などの山へも出かけていました。
人々は、その土地の人々と交流を深め、米や味噌をもらうかわりに、
クマ肉や胆などを分け合っていたそうです。
そうした中で、マタギの技術もまた伝えられていきました。
中には、地元の女性と結婚する人もいて、
マタギの文化は徐々にその土地にも根付いていったのです。
そうやって伝えられた各地の人たちが根子マタギを
「本家」と呼んで慕ったため、根子は「マタギ発祥の地」と呼ばれています。
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■マタギの知識は人を助ける
最後に、富久栄さんにとってマタギとは?
「趣味もようなものだけれど、場合によっては人助けになることもある。」
以前、蔵王(宮城)で人が遭難した時、地元の警察から連絡がきたことがあったそうです。
地元の人以上に根子マタギが山を熟知していることを、地元の人たちも知っているのです。
「マタギで生計を立てていた時代ではもうないけれど、
歴史あるものだから残していきたいと思いますよ。」と
少しはにかみながらお話してくれたその顔が印象的でした。
                                   県北担当 やっつ

2009年10月16日01:03 | 県北情報 | Trackbacks (0)

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