以前、こちらのブログでも告知しておりました「羽後のさなぶり料理を楽しむ会」をご紹介します。
「早苗振る舞い」が「さなぶり」になったと言われる農家の行事があります。
これは、田植えを手伝ってくれた人を迎えて宴会を開き、忙しい田植えが終わった疲れを癒す、
農家にとっての楽しみな行事だったようです。
今では消えてしまいそうな農家の伝統行事を受け継ぎ、継承されることを願って開かれているのが
この食事会です。協議会会員・そば屋彦三の猪岡専一さんと羽後町田代地区のお母さんたちが
協力し、旧長谷山邸にて地元の食材にこだわったもてなし料理を一般の方に振る舞いました。
(主催:羽後の伝統料理を再現する会<会長:阿部久美子> そば屋彦三)
会場となったのは、田代地区にある旧長谷山邸。町のシンボルであり、風格ある歴史的建造物に
約70名の方が食事会に集まりました。初夏に行われるさなぶり料理は、緑の庭園を眺めながら
の食事会となるよう、開放された空間。情緒たっぷりです。
70名分の料理ですが、田代地区のお母さんたちはその準備に慣れたご様子。
この行事に合わせて、料理に創意工夫とアレンジを凝らしてきたお母さんたちは、
それぞれの持ち場でやる気満々。
年3回行っているこの行事ですが、今年初めの開催を予定していた「正月料理」が
大雪のため開催できなかったため、皆さん、さなぶり料理の開催を待ちわびていたそうです。
写真は、「かやき」の準備です。鶏のたたきが入っていますが、猪岡さんが何時間もかけて
鶏肉をたたいたそうですよ。
写真左)有原トミさんは、この行事食に欠かせない料理を作ります。それが「180年前のよふかん」
この旧長谷山邸で文政10年頃に記録された料理レシピをもとに「よふかん」を忠実に再現しています。
そのよふかんに添えられたのが藤の花の寒天。紫の花弁が浮かんでいました。
写真右)今回、お手伝いしてくれたのが羽後高校のボランティア部の皆さん。様々な活動をされている中で
食育にも力を入れているそう。猪岡さんは、「配膳をしてお客さんと交流をする中で『おもてなし』や
『常識』を身につけ、自分たちの住む町ではどのような食材を使って料理をしているか、盛り付けへの
工夫にも 興味を持ってほしい」と話されていました。
彼女たちの活躍でお客様たちもとても喜んでいましたよ!
写真左)豊作を願ってお供えされていた「まゆ玉」。餅が藁にくっついていました(12個×12本)。
そして苗が添えられてます。昔は田植えの手伝いにきてくれた人にこの繭玉を持たせたそう。
田植えをしながら「あそこの家からは○個もらった」などと話したそうですよ。
写真右)食事会の前に、西馬音内盆踊りの演舞が行われました。端縫い衣装と藍染め浴衣を
着た地元の菅原さん親子の演舞からスタートし、そして参加者と猪岡さんが更に舞を披露、
大きな拍手が送られました。
いよいよ食事会。「田代地区のお母さんたちが心を込めて作った料理を味わってほしい」と猪岡さんのご挨拶。
そして、「メニュー表に『かじかの(※)がつぎ汁』とありますが、毎年この時期に採れる“がつぎ”が今年は
採れませんでした。メニュー表を作る段階では間に合うだろうと思っていましたが、自然の中での料理
ということでどうかご理解ください」というお詫びの説明がありました。
毎回、この時期はこの食材を、という思いがあるはずの猪岡さんや田代のお母さんたち。
しかし、自然を相手にしている以上、こういったケースとも付き合っていかなければなりません。
自然の中で生かされ、地産地消料理を味わうのであれば、この「食べられない体験」があるのも
不思議ではありません。参加者全員がこの猪岡さんの説明を受け入れていました。
(※がつぎ=マコモ。沼や河川、湖などに生育し、マコモダケとして食用される)
こちらが「さなぶり料理」です!!
①ほの葉ままと餅 ②よふかんと藤の花の寒天 ③小豆汁 ④煮付け ⑤にらとにしんの酢味噌和え ⑥わらびのおひたし ⑦つぶの小味噌煮 ⑧山わさびの冷汁 ⑨漬物 ⑩塩くじら汁 ⑪吸い物 ⑫かじかのがつぎ汁 ⑬冷がけそば ※更に「かやき」が加わります。 |
初夏の旧長谷山邸にて、田植えの労いと今年の豊作を願ったお食事会でした。
次回、同会によって開催されるのは、稲刈り後の「刈り上げ節句のもてなし料理」です。
★おまけ
お膳に添えられていた、たんぽぽの押し花。 これは、有原トミさんが作ったものです。 「70人分作るのは大変。一度やりだしたら やめられなくなってしまった」と笑うトミさんですが、 「難儀だけれど、喜んでもらえたら嬉しいもの」。台紙の裏には、 「一輪の花に こころ和み、ほっと笑顔に」と トミさんのメッセージが添えられていました。 |
協議会事務局
2012年6月14日12:00 | 県南情報 | Trackbacks (0)