1月10日(月・祝) 鹿角市花輪の花輪市民センターで、第50回花輪地区子ども会対抗かるた大会が
開かれました。いわゆる百人一首かるたを1チーム8人で2人ずつ選出し、リレー形式で対戦するチーム対抗戦。
子どもたちはこの大会に向けて百人一首の上下の句を覚えお正月も返上で猛特訓に励み、
一年で、いや、たった数日で大人も驚く成長ぶりをみせました。
■練習風景
大会4日前の1月6日(木)わたしは以前取材でお世話になった方のご厚意により
2つの町内の練習場所にお邪魔することができました。
【結成3年目 小坂子ども会】
小坂(こざか)地区の練習場所は地区内の旧保育所。
午後6時を回っていましたが、玄関にはたくさんの小さな長ぐつが並び、
緑色の絨毯が敷かれ暖房が焚かれたあたたかい室内に、およそ25人の子どもたちが集まっていました。
小学校1年生から中学校1年生までの子どもたち。
4人1組となって100枚の札に向かい小さく腰を上げて、目はかるたに耳は詠手の声に向けられていました。
初心者(もちろんわたしも)という方のために少しルール説明を。
まず並べるかるたは自分たちの陣地に50枚ずつの計100枚。
詠手が上の句を詠みあげたらそれに続く下の句を取ります。
例えば、近年マンガで有名な在原業平の
「ちはやぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みつくくるとは」の場合。
詠手が上の句「ちはやふる・・・」を詠みあげるとそれに続く下の句は「からくれなゐに・・・」の札です。
相手側の陣地の札を取ると自分たちの陣地から1枚相手側に渡します。
25枚ずつで選手を交代して4回対戦。取った枚数で競うのではなく、自分たちの陣地の札が無くなれば勝ちです。
小坂地区はいわゆる新興住宅地で子どもの数に比べ、指導できる大人の数が少ない地域でもあります。
なかなか後が続かず一時途絶えていた小坂地区のかるたが、親の会の有志によって再開されたのが3年前。
「子どもたちも1年目は無我夢中で参加するだけでしたが、2年目には学年もひとつ上がるし集中力もついて
一生懸命に“勝ちに行く”姿勢がみえるんですよね。1、2年生なんか去年は親の膝から離れられなかったのに、
いまではこうしてちゃんと札に向かって座っている。目に見える進歩ですよ。
今年は出場するDクラスで1位を狙っています!」と話すのは親の会会長の伊藤亨さんです。
このかるた大会はA~Dクラス(一番上のランクがAクラス)に分かれ、その中で順位を決めています。
今年は総勢27チームが参加しました。
お兄ちゃんのかるたをみて覚えたという小学1年生のゆいちゃんは、
「上の句で取れるようになったことが嬉しい。難しいのはお手付きをしてしまうところ」と教えてくれました。
また、2年生のさきちゃんは今年の目標に「10枚くらいとれるように頑張りたい」と抱負をお話してくれました。
保護者のおひとりでかるたの再開に携わった女性は、
時折子どもたちに厳しい声をかける一方、とても優しい表情でこう話してくれました。
「かるたはわたしが子どもの頃には当たり前にあったものでした。
小坂は一度途絶えてしまっていましたが、やろうと声をかけたら他のお母さんたちもすぐに集まってくれました。
親も子どもと一緒に札とルールを覚えたり、親同士もとてもよく協力し合っていけていると思います。
花輪はかるたの里だと思うので、子どもたちには子ども会にいる間は続けてもらって、
自分が親になったら今度は自分の子どもに伝えてくれるようになってくれればいいなと思いますね。」
【昨年Aクラス優勝チーム 六日町子ども会】
2か所目にお邪魔したのが、花輪商店街のある六日町地区。
ここは、小坂地区とは反対に子どもの数が少ない町内です。
指導している大人で、この中に自分の子どもがいる人はいません。
子ども2~3人に大人が1人ついて、初心者や低学年の子どもに細かく丁寧にかるたの取り方を教えています。
例えば、さきほどの「ちはやぶる・・・」。
百人一首の中に「ち」ではじまる句は三首、そのうち「ちは」で始まる句は一首です。
そのため詠手が「ちは」と詠みあげた瞬間に、下の句「からくれなゐに…」を取ることができます。
こうした取る札を決定させる文字を「決まり字」といいます。指導してくれる大人たちは下の句を指さしながら
「この札の決まり字は“たき”」だとか「この札は“なげ”」だなどと、丁寧に決まり字を教えていました。
試合の時、経験の浅い低学年の子どもが自分の手もとにある札だけでも確実に取れるようにするのは
チーム戦で勝つためには非常に大切なこと。子どもたちも1枚でも多くの札の決まり字を覚えようと必死です。
六日町は、毎年8月鹿角が誇る夏祭り・花輪ばやしが行われる地域で住民同士の絆がとても強いところです。
また、50年ほど前にこのかるた大会ができる礎となった「花輪かるた同好会」結成時に
中心となった町内でもあります。
かつて花輪中心部の六日町や舟場町などの町内では、人々が各家々を訪問しかるたを楽しんでいました。
人々は競技のためではなくごく自然と生活の中で百人一首を覚え、かるたをしていたそうです。
そのため、かるたを伝統の遊びとして大人が子どもに伝えるという“気持ち”が六日町には連綿と息づいてきました。
しかし、どの市町村でもそうであるように中心部の少子化は深刻な問題。六日町も例外ではありません。
今年、六日町子ども会の子どもは5人。大会出場可能な高校生を入れても6人しかいません。
1チーム8人で出場するためにはほかの町内から応援を頼むしかないのです。
六日町では近隣の町内から2人が加わっています。2人の住む町内ではかるたをしていないのだそうです。
昔はやりたくても他の町内の子どもが参加することはできなかったそうですが、
今ではそうしたかるたをしたいという子どもを優しく受け入れ、分け隔てなく指導しています。
なんと今年は八幡平(車で10分はかかる場所)に住む2人の兄弟も練習に訪れています。
詠手として練習を見守っていた花輪かるた同好会の前会長武石佳久さん(右写真)は、
「かるたをする子どもはいい子ばっかり。負けて悔しくて泣いて、でも一生懸命に練習して。
六日町は夏は花輪ばやし、冬はかるたを通じて子どもを一生懸命育てれば、子どももずっと楽しめるじゃない。
ここで育った子どもが大学で競技かるたを始める人もいる。後継者を育てて2段、3段と腕を上げて行ってほしい」
と話してくださいました。
■大会当日
さて、たくさん頑張った子どもたちの気になる大会の結果は・・・!
じゃじゃ~ん☆
六日町子ども会 Aクラス優勝(左写真)!2連覇おめでとう!!
小坂子ども会A Dクラス優勝(右写真)!さらに小坂子ども会BはDクラス準優勝!! すばらしいっ!
今回圧巻だったのが、Aクラスの優勝決定戦 六日町 対 舟場Aの試合。
3番手終了時、六日町は10枚ほどの差で負けていました。誰もがこのまま舟場の勝利かと思っていた最終番。
左写真 左端の高校生の杉江瞬くんがプレッシャーと大勢の観衆の中、
驚異の集中力でジリジリと舟場を追いつめ結果3枚差での大逆転勝利☆
相手側の札を払い取ったその瞬間、
詰めかけたこの大観衆から「お~っ」、「すごいっ」という称賛の声が上がったのは言うまでもありません。
六日町の練習にお邪魔した時、中学1年の高村美希子さんに
かるたを通じてどう成長していきたいですかと質問すると、即答でこう話してくれました。
「かるたがすごいってことを誇れるようになりたいです。今年の目標は2連覇です!」
花輪の人々が半世紀かけて育ててきたかるたへの情熱と誇りは確実に次世代に受け継がれています。
県北担当やっつ
※この場をかりて、お世話になった大勢の方々にお礼申し上げます。本当にありがとうございました。
2011年1月11日18:51 | 県北情報 | Trackbacks (1)
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