旬を感じるツアー「鳥海山麓ぶらぶら旅」
~藤原優太郎と歩く秋田のみち~(2011年9月 由利本荘市)
2011年9月18日(日)・19日(月)の2日間、秋田県の魅力を探る旅「あきた農山村旬を感じるツアー」(略して「旬感ツアー」)の「鳥海山麓ぶらぶら旅~藤原優太郎と歩く秋田のみち~(主催:NPO法人あきた地域資源ネットワーク)」が行われ、私、現地特派員のよどぎみが同行取材をさせていただきました! 旅をナビゲートしてくださったのは、「山歩きの案内人」の異名を取る、登山活動に熱心な藤原優太郎さん。 |
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◆1日目行程 ………………………………………………………
9:00 羽後本荘駅出発 → 9:40 矢島駅着 10:00 妻ノ神峠(散策) → 11:25 土田家住宅見学、八森苑まで移動(郷土料理の昼食) 13:30 矢島城下めぐり(散策) → 14:00 天寿酒造見学 15:30 千本カツラ見学(散策) 16:30 鳥海荘着 17:00 藤原優太郎トークショー |
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「鳥海山ろく線」で矢島へ | |
由利本荘駅出発、由利高原鉄道に鳥海山ろく線にて、矢島駅まで移動。 |
かすりの着物で「秋田おばこ」の扮装をした乗務員から、嬉しい桜茶のサービス。 |
車窓から見える、由利本荘市の田園風景。 |
色とりどりの花壇で飾られた、黒沢駅。 |
川面に空が映り込んだ、子吉川。 |
タブレット交換も、今では珍しい光景となりました。 |
列車同士の衝突を防ぐため、上りと下り列車の中央に位置する前郷駅にて、行き違いの手続きを取る「タブレット」と「スタフ」の交換が行われます。「タブレット」とは、区間によって違う形をした金属の通行許可証のことで、「スタフ」とは、列車番号・使用車両・時刻なの詳細が書かれた行路票のことです。 本荘駅から前郷駅を通過し、矢島を終点とした場合、「本荘~前郷~矢島」の区間で、それぞれ違う形をしたタブレットを使用します。タブレットのある駅と駅の間は「閉塞」と言い、羽後本荘~前郷間がスタフ閉塞、前郷~矢島間はタブレット閉塞なのだそうです。前郷駅が唯一の有人駅となっているのはこのためです。 かつて「横荘鉄道(横荘線)」の拠点とされていた前郷駅でしたが、全線開通とはならなかったため、交換設備も設けられなかったといいます。平成の大合併で由利本荘市となっても自動閉塞化されることはなく、全線が単線区間のまま現在に至っています。国鉄時代の名残りを、まさかこんな場面で見ることができるとは。 |
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矢島駅に到着。散策タイム開始。
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(写真上)江戸時代のものと思われる道標。「右 山道 左米(とうまい)道」とある。秋田県内のあちこちに、今もこのような石造りの道標が残っています。 (写真左)弥勒坊神社。 |
「妻ノ神峠~軽井沢」散策 | |
矢島町新荘にある妻ノ神峠から、軽井沢を散策。 |
ムラサキツユクサ。 |
鳥海山の標高は、2,236m。「夫婦で見ろ」と覚えるのだそう。厚い雲に覆われた雨模様の今回は、残念ながらその御姿を見送り。 |
「ここから見る鳥海山、景色を知る人は少ないよ。おすすめの場所なんだ」と、藤原優太郎さん。 次回はぜひ、天気の良い時に。 |
ここで、民謡唄い手として知られる(現・秋田民謡協会会長)石井ひろみさんが、広がる田園風景に非常にマッチした「秋田草刈り唄」と「秋田馬子唄」とを唄ってくださいました。
「秋田草刈り唄」 |
「秋田馬子唄」 ハイーハイ
※「フジオ ロクボン出版の「民謡学校」より抜粋」 |
馬頭観音の前で民謡を披露する石井ひろみさん。 |
身を乗り出すと危ないですよ。 |
現在は展望台となっている「馬棚長峰」に登ることに。鍋倉で生まれ育った佐藤広男さん(写真右・右側の男性)の説明によると、「馬の背中のような尾根」であることから、その名がついたそうです。 |
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広男さんいわく、「立石林道にある立石神社近くに、“観音開きの石”(と、自分は呼んでいる)がある。ここから見ることはできないが、木を伐採して景観を整え、いずれ観光地にしたい」とのことでした。観音開きになっている石(岩?)とは、これまた珍しい。機会があれば、是非見てみたいですね。 |
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「土田家住宅」見学 | |
土田家住宅は、江戸時代の初めころに建てられたという、秋田県内で最も古い農家の遺構を復元したものです。注目すべきは、武士の系譜を引く「主殿づくり」。当時の武家農家の住まいの様子が分かる、生活道具なども展示してあります。また、重要文化財にも指定されており、平成18年には皇太子殿下が行啓されたそうです(※その際の記念碑や写真も展示)。 |
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土田家にゆかりのある佐々木宣冶さんの説明を受けました。「文化財になって、保存状態を一番見られるのが、土壁なんです」 |
脱穀後に使用する米選別機「唐箕(とうみ)」。取っ手を回して風を起こすことにより、風圧で軽い物は飛ばされ、重いものが残るという仕組み。 |
石臼など農家の生活道具。 |
肥料の分配等に使用したメツカイ(手ザル)。 |
「矢島町歴史交流館(八森苑)」見学、昼食 | |
矢島町歴史交流館(通称「八森苑」)は、元々讃岐国(香川県)の領主だった生駒(矢島)藩の重臣として随行してきた佐藤氏が、代々住んだ家です。現在残っている母屋と離れは戊辰戦争で焼失したので、子孫が明治時代~大正時代にかけ、江戸時代の武家屋敷の建築様式に習い、再建されました。 そしてこの見事な庭園も、高松市にある栗林公園を模して佐藤氏が作ったと言われており、その後の時代考察の元、復元されたそうです。 |
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大和張りの天井。 |
一枚板を14枚使用した廊下。 |
離れの2階座敷から見た中庭にも趣があります。平成16年に国登録有形文化財に指定され、「八森苑」として地域住民に親しまれています。 |
大正時代に建設された遠州流の茶室には、外来黒柿の木がふんだんに使用されています。当時、外来種の木材は珍しかったのだとか。 |
(写真上)直売所「やさい王国」(代表:茂木さん)の皆さんが、腕によりをかけて作ってくださいました。 (写真左)「八森苑」での昼食風景。
~「やさい王国」特製のお膳の中身~ 岩魚焼き、アスパラガスの肉巻き、ゼンマイやフキの煮物、ササギのゴマ和え、ねずみほうきダケ、糸かぼちゃの和え物、ワラビ、がっこ(漬物)、天麩羅に、美味しいひとめぼれのご飯と、ゴリと筍の味噌汁…。 これだけでも充分な量なのに、笹巻き・栗・サツマイモ豆腐、松皮餅などのデザートも付いて、もぅお腹がいっぱいです。真心のこもった矢島の郷土料理を、ご馳走になりました! |
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「龍源寺~天寿酒造~千本カツラ」矢島城下を散策 | |
少し天気が回復した午後、優太郎さんの説明を聞きながら、矢島城下を「ぶらぶら」散策。 まずは、1,300の檀家を持つ、生駒藩主の菩提寺「龍源寺」の見学。その半車の家紋は何代にも亘って引き継がれ、歴史をつくり続けています。 |
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生駒藩主の菩提寺「龍源寺」の見学。 |
生駒藩公御墓所。 |
佐藤政忠氏の書斎。佐藤政忠氏は矢島藩家臣の二代目で、廃藩置県後に矢島で近代製糸工場の第一人者として活躍したそうです。 |
社会教育委員会から委託されたボランティアガイドの佐藤昌子さんに「旧・佐藤政忠家住宅」の内部を案内していただきました。 |
佐藤政忠家住宅。 |
大手橋(大手門)の奥に、矢島小学校。 |
老松の並木と水濠が残る生駒公居城「八森城址」にて、矢島城下記念撮影。 |
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天寿酒造酒蔵見学。 |
残念ながら、本日工場はお休みとのこと。 |
県指定天然記念物「千本カツラ」は、蛇を連想させる形から、別名「蛇喰(じゃばみ)の千本カツラ」とも呼ぶそうです。千本カツラよりバスに戻ると「カツラの木の1本になってしまった方、いませんか~?」と点呼(笑)。 |
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ヒツリフネ。 |
猿倉温泉「鳥海荘」に宿泊。 |
鳥海荘にて夕食、懇親会 | |
夕食時、藤原優太郎のトークショーがおこなわれました。スライドショーを使用し、彼がこれまで登った山の紹介や、自然観察の醍醐味などが語られ、参加者らは熱心に聞き入っていました。
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~参加者達からひとこと~ 度々、よどぎみがグリーン・ツーリズムのイベントなどで再会する、千葉ご夫妻。もともと藤原優太郎さんが主催する「山の学校」の登山のメンバーで、今回のツアーへの参加は自然な成り行きだったもよう。けれども、「優太郎さんのことを知っているようで、実は(本業が)何をしている人かを知りませんでした。今回それが分かって良かったかな(笑)」と言うと、周囲は笑いの渦に。 秋田市からお越しの小田嶋さんは、近畿日本ツーリストのチラシを見て、「気軽にぶらぶら」なら、参加しても良いかなと思ったそうです。「実際は思ったより歩いたので、ちょっと疲れましたけど、良い運動になりました」との感想。 同じく、秋田市の岩見三内からお越しの熊谷さんと二木さんは同級生で、優太郎さんの2年下の後輩なのだそう。「優太郎さんが絡んでいる旅だってば、俺だち参加しないわげにいかねぇべ?」と、冗談混じりに答えてくださいました。 |
献立は、ニジマスの刺身や岩魚焼きなどの旬魚、特産の由利牛、ブナハリダケやサワモダシなどのキノコ類など、地域の食材を大切にしたご馳走でした。重箱にはがっこ(漬物)の他、竹の子やうど、ニオサクの煮物などもあり、皆で仲良く取り分けていただきましたよ。 | |
◆2日目行程 ………………………………………………………
7:00 鳥海荘出発 → 8:00 子吉川源流の水源地(散策) 9:00 袖川トンネル(散策) 10:00 袖川峡の渓谷林(散策) 11:00 中直根環境改善センターにて、昼食を兼ねたピザ作り 15:00~16:00 花館牧場にてアイスクリーム作り体験 → 18:00 秋田着 |
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子吉川源流の水源地を散策 | |
【ポイント】旧鳥海町の鳥海山麓には、山の高低差を利用した発電所が全部で5つある(鳥海川第1・鳥海川第2・袖川・板平・鳥海川第3)。 | |
この日は朝から雨模様。 |
子吉川源流の水源地へと出発。 |
電力事業創成期だった大正15年、鳥海電力(株)によって建設された、袖川発電所の導水管。 |
トリカブトです。山に入ってこれがあったら、注意しましょう!それにしても、綺麗な花…。 |
降りしきる雨の中、散策さくさく。鳥海川第二発電所の水路橋に沿って森に入ります。 |
標高400m近く、取水口パイプの先端に見えるのが、発電所です。 |
下を見下ろす参加者ら。皆が立っているのは、鳥海川第二発電所の取水口。 |
昔の袖川の人々は、取水口パイプ傍の傾斜を伝って降り、大川反へ町出し(買物)に行ったもよう。 |
水源地である高台には、発電所の職員が設置した「水分(みくまり)大神」の石碑が。「樹下石上」という言葉から、人々に水を分け与えてくださる水神様を敬う、当時の人々の気持ちが伺えます。 |
いよいよ、ミステリーゾーンへ突入! 廃村となった「袖川集落」へ抜けるための「袖川トンネル」到着。真っ暗で足場が悪いため、懐中電灯や長靴等の重装備で進みます。 |
袖川ミステリーゾーン探検隊~直根林道第二隧道(袖川トンネル)~ 中は狭くて暗く、626mの距離が異常に長く感じられました。夜に一人で…などと考えたら、非常に怖いのですが、今回は皆と一緒でしたので平気でした。トンネルの天井には電線が通っていたり、中間地点には退避所があったりと、かつてこの先に人が住んでいた名残りを感じることができます。 |
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何故かここで記念撮影。後ろには、小さく坑口が見えます。「無事に抜けられますように…くわばらくわばら」なんて言う参加者も。 まさに、ナントカ探検隊のよう(笑)。 |
出口では「鳥海荘」の佐藤司支配人が、一足先に車で行って私たちを迎えてくださいました。「怖かったでしょう(笑)。帰りは、車で(トンネルを)抜けますから、安心してくださいね」ホッと胸をなで下ろした瞬間。 |
出口すぐに、整備された鳥海川第二発電所が。 |
渓谷林を抜け、袖川の廃村へと向かいます。 |
袖川集落跡。奥に、廃屋が見えます。 |
特別許可で、立ち入り禁止区域に入ります。 |
東北電力袖川発電所。 |
雨宿りを兼ねた休憩。 |
本海流前ノ沢番楽御獅子様誕生の地。 |
優しい紫色をした、ノコンギク。 |
「正重寺~直根環境改善センター~花立牧場」地域の人との交流 | |
中直根の「正重寺」は、総持寺を本山とする禅宗のお寺です。突然の訪問にもかかわらず、住職さんが丁寧に案内してくださいました。 | |
鳥海町直根環境改善センターでの昼食はお待ちかね、地元の料理名人・真坂愛子さんが作った、その名も「鳥海ぶらぶら弁当」。真坂さんは、漫画を原作とした映画「釣りキチ三平」の撮影がここ鳥海町で行われた際、スタッフ用のロケ弁当を作った方としても注目されています。 ~「鳥海地産地消弁当」おしながき~ 岩魚の煮びたし、ナス焼き(バッケ味噌)、山竹の子やぜんまいの煮物、舞茸・椎茸の天ぷら、なめこ・もたち・こならしめじ煮、みずの実の中華味付け(千切りしょうが)、蕗やとび茸の味噌漬けなど。ご飯は美味しいあきたこまち。 使用している食材は全て地物。昔から伝えられている料理法だけでなく、現代人の口にも合うよう工夫された、手の込んだお弁当でした。 |
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中直根環境改善センターで中直根町内会副会長・佐藤博栄さんの挨拶後、昼食をいただきます。 |
雨も本降り。地域の方がテントを張り待っていてくださいました。感動!さっそく石窯でピザづくり体験。 |
様々な具材で、和洋お好きな味をど~ぞ! |
本格的な石窯で焼いたピザは、香ばしい! |
「石窯ピザ作りがしたい方は、ご連絡ください。可能な限り対応させていただきます!」と佐藤博栄さん(TEL 58-2654。頭に0184をつけて、くれぐれもおかけ間違いのないように)。親子でも、友人同士でも、楽しめますよ~。 | |
続きましては、鳥海山麓の花立牧場「ミルジー」で、ジャージー牛乳を使ったアイスクリームづくり。
アイスクリーム作りの指導をしてくださったのは、花立牧場ユースプラトー支配人の佐藤健美さん。「美味しくできるも、できないも、あなたがたの協力次第。だって材料は皆同じなんですから」と、気合い入れ! |
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五城目産キイチゴを使用した、ミルジー特製「ラズベリーアイス」もありましたよ(詳しくは、キイチゴ革命!~五城目町・新規特産品への取り組み~をご覧くださいね)。 |
ツアーの帰り際、「鳥海荘」の佐藤司支配人より袖川集落で撮影した記念写真が、参加者に手渡されました。この短い時間に現像してくださったようで、皆さん感動。まさにベストタイミングなサービス、どうもありがとうございました! |
初めての場所や廃村巡りは、正直言って少し勇気がいりましたし、あいにくの雨模様で肌寒かった2日間でしたが、地域の方々との温かい交流で心がホッと救われた気がします。 「山の水や森林からの恵みなどは、農家も含めた人間全体の営みの原点だと思う。今回は山歩きというより、(自然界の恵みを感じることができる)色んな場所に、可能な限り行ってみようと思った。自分の足で歩いてみれば、同じ場所に行っても、それぞれで見える景色が違う。せめて生きているうちは、人生に一度歩くかというところを歩いてみてもいいんじゃないか。」という優太郎さんの言葉。 確かに、色々歩いてみると、そこにしかない景色、そこでしか感じられない気分があるのだなぁと実感。広い視野を持つため、まだ見ぬ場所に想いを馳せてみるのも悪くない、と思ったのでした。
県央地区現地特派員 よどぎみ |