「大森町の皆さん、ありがとう
仙台市立南光台東中学校と
大森町グリーン・ツーリズム推進協議会の交流

2011年5月12日~13日

大自然と空の青。聞こえてくる大きな笑い声、育まれる温かい交流。

こんな日常を決して当たり前とは思わずに、ありがたい幸せと感じ取った繊細な彼ら、彼女たち。

 

5月12日から13日にかけて、仙台市立南光台東中学校2年生の皆さんが、総合的学習の一環で、横手市大森町を訪れ、大森町グリーン・ツーリズム推進協議会(以下、大森GT)の会員である農家12軒で共に過ごしました。

同校は東日本大震災の被害を受け、校舎にひびが入ったため、同じ地区の小学校を間借りして学校生活を送っています。

     
はじめまして!
   

初めての農業体験、そして初対面の民家に泊めて頂く経験を前に、生徒の皆さんはちょっと緊張した面持ち。しかし、この限られた時間の中で得るものが、きっとあるはず。
大森GTの後藤洋子会長(写真左:手前)は、「私たちと過ごすことで、傷ついた心を癒して欲しい。」と、この日を迎える以前から、温かい気持ちを寄せていらっしゃいました。特別なことはせず、背伸びのないおもてなしで迎えるんだ、と。

 

「今日しか出来ない体験を、自ら進んでやって欲しい。」
同校の先生方の大きな願いと期待を背負い、生徒の皆さんはたくましく各農家で農業体験に励み、自然や文化に直接触れる経験を深めました。

     
農家で過ごした一日
 
私はこの1日を後藤会長のお宅にお世話になり、女の子5人と共に過ごさせていただきました。農業体験第1弾の種いもの植付はあっと言う間に終わり、お昼ごはんの時間まで、近所の佐々木紀三郎さん(農家民宿仁真園)のお宅で過ごすことになりました。(写真右:佐々木さんの裏山で椎茸の収穫したそうです、嬉しそう!)
 
佐々木さんのお宅にはポニーや鳥骨鶏(うこっけい)、うさぎなど動物がいっぱい!みんな興味津津で、動物達との触れ合いを楽しんでいました。
 
 
 
お昼は、後藤さんのお宅に戻り、自家製野菜がたっぷり入ったカレーです。盛りつけは各自で。「食べる分だけ取ってもらえば、お互いに気を遣わなくていいもんね。」後藤さんなりのおもてなしが、きっと「遠慮」と言う壁を払うのかもしれませんね。
 
 
食後のあとは、自己紹介ターイム!趣味や家族の話を楽しくお話してくれました。グラウンドゴルフの達人であるご主人の指導で、室内用にも挑戦したね。「おばあちゃーん、虫恐いからとってー!」そんな声も聞こえてくるようになりました(^^)
 
 

午後は、再び汗を流す作業に。
「土の上に座っちゃえ!」カラッと晴れあがる天気の中の作業(水菜の定植)は、大変だったかもしれませんが、みんな最後までお手伝いしてくれました。
 
「じゃが芋の定植だって半日を予定していたのに、早く終わったもんね。みんな筋がいいよ。(ご主人と)二人だとうんと時間がかかるもの。助かったよ!」後藤さんの感謝の言葉にみんな嬉しそうに耳を傾けていました。
 
処分されるからし菜と小松菜の収穫は、ひっこ抜くだけの楽しい作業。みんなで作業すると本当に早かったね。   全ての農作業が終わって、借りた長靴に付いた土をきれいに落として後藤さんに返しました。みんな、お疲れさま。
 
 
横手市を含む秋田県南は今年の冬、雪害に見舞われました。大きな被害を受けた農家の方々はたくさんおり、環境が整っている後藤さんの畑には、何本ものリンゴの苗木が植えられていました。いずれ、被害を受けた果樹農家に受け渡される苗木たち。
こうして、農業体験は一日を通して行われました。夕方からみんなで温泉に連れて行ってもらい、夜は後藤さん夫妻とモノマネをしたり、おしゃべりをしたり、楽しい時間を過ごしたそうです。後藤さん夫妻にしてみれば、お孫さんとちょうど同じ年頃の女の子達。もはやお客さんではない、家族に似た交流が育まれたのではないでしょうか。
     
お別れのとき  
 
小雨が降る翌朝、その空気は“別れがたい”とでもいうように、お別れ会が行われました。1泊という短い時間の中でぎゅっと濃密な思い出を作ったことでしょう。みんなの感想をお伝えします。
 
農業体験では、はじめ、じゃがいもを植える間隔が分からなくてよく教えてもらったけど、慣れると褒められて嬉しかったです。大森町は地震のひびもなく、空気が美味しかった。みんなと過ごせて、地震の辛さを少しだけ忘れられました。
初めて鶏小屋に入って、とてもスリリングな体験をし、初めての農作業を皆さんに優しく教えて頂きました。この体験を通して、僕らは落ち込んでばかりではいられないなぁと思いました。宮城に帰ってもこの事を忘れず、今後に活かそうと思います。
農作業では草取りや水やり、精米の袋詰を体験しました。全て日常生活では経験できない事ができ、(大森GTの)嵐田さんにとても感謝しています。そして班員みんなが楽しみにしていた食事ですが、昼も夜も朝も、栄養バランスの採れた食事に全員とても満足しました。

田んぼを耕したり、山に山菜を採りに行ったり、椎茸の収穫を手伝いました。その作業はどれも大変なことだと思いますが、終わると達成感がありました。
私たちを歓迎してくれた農家さんの優しさが嬉しかったです。

いろいろな動物に触れ合ったり、山菜採りをすることができました。きりたんぽや鳥骨鶏の卵、カレーをご馳走になり、どれもとても美味しかったです。やったことのない動物のうんち取りや馬車乗りは最高でした。

 
 

大森GT 加藤美和子さんから
我が家では、地元の大森中学校の農業体験と皆さんの体験が一緒になりましたが、皆さんはとてもよく挨拶ができるので、私たち大森の子ども達もみんなのお陰で挨拶ができていたことは本当によかったと思っています。農業体験の他に、山ではカブトムシを見つけたり、カモシカを見たり、大森の自然を満喫していただけたのではないかなぁと思います。そして、みんなが元気に過ごしてくれたのは私たちにとって、とても嬉しいことです。地元に戻ってもどうか元気に頑張ってほしいです。

大森GT 後藤洋子会長から
今まで何十校と受入をしてきましたが、初めての出来事がありました。朝ごはんを食べて帰る支度をしているときに彼女達から「お話があります。」と言われたんです。こちらから聞くことはあっても、生徒さんから感想を話すという機会は初めてで、おじいちゃん(旦那さん)と正座して話を聞きました。そしたら、おばあちゃんが亡くなっていたり、おじいちゃんが行方不明のままだったり、そんな状況の彼女達が「ずっと地震のせいで心が落ち着かなかったけれど、ここで楽しい時間を過ごせました。」って言うんです。もう、朝からおじいちゃんと一緒に涙ポロポロ流しました。本当に素直で、しっかりした子ども達でした。

     

この総合的学習の一環である野外活動には、「秋田の人が誇りに思う自然・文化に触れ、自分達のふるさとを見つめ直す」というねらいがあったそうです。大森町のお父さん、お母さんたちと過ごした時間は、生徒の皆さんの心を大きく揺さぶったのではないでしょうか。
作業の途中、「私たちは被災者じゃない…」という会話がこぼれました。甚大な被害を受けた宮城県。校舎にはひびが入り、平穏な日常を失ったというのに、彼女達の言葉には強さがありました。先生たちやご家族の皆さんの願いを、彼ら、彼女達は強く受け止めているように思います。今を見つめ、そして、前進する力強さを彼女たちに教わったのは私の方です。きっと、大森GTの皆さんも同じ気持ちのように思います。


宮城に戻ったみんな、元気にしてるかな。

 

県南担当 けこさん