4月29日(金)、三種町鯉川の旧鯉川小学校校舎に「橋本五郎文庫」がオープンしました。
橋本五郎さんは、ご存知の通り、読売新聞特別編集委員としてテレビなどで活躍されている方ですが、
実は、旧琴丘町のご出身で、鯉川小学校の卒業生なのです。
平成21年3月惜しまれながら閉校した母校に寂しさを覚えながらも、自分にできることがあればと、
去年11月におよそ2万冊の蔵書を町に寄贈しました。
校舎正門前の桜が8分咲きになったこの日、校舎の新たな出発を記念したセレモニーが行われ、
500人あまりの人が文庫のオープンを祝いました。
地元ゆかりのピアニストと尺八奏者の記念演奏を終えると、いよいよ橋本さんの登場です。
ステージに立った橋本さんの背景には、閉校時も外されることなく残された、
児童たちが作った壁の装飾が大先輩を歓迎していました。鯉川の名にちなんだ大きな鯉のぼりです。
橋本さんは、冒頭で「私は本を贈っただけです。それをこんな形にしてくれてありがとうございます」と述べ、
最初は自分の名前を付けることに躊躇したこと、しかしそれで人が集まるのであればいいと思ったことなど、
開設に至るまでの心境を語りました。
そして、「(地域から)学校が無くなるということは大変なことです。
統合は避けられないことなのだと思いますが、失うものも多いはずです。」
「わたしたちの一生は限られています。一日は24時間しかない。
そうした中で、本の中ではいろんな人に会うことができます。
本を読みながら一日の自分を省み、落ち込んだ自分を励ます。
この文庫がみなさんの少しでも生きる手助けになれば、そう思っています」と、
無事にオープンを迎えた文庫への想いを、一言ずつ大切にしながらゆっくりと観客に語りかけました。
橋本さんは講演の中で、「人が集まる場所を作りたいと思っていました。
ここに行けば誰かいるかもしれない、という場所は大事です」と話していましたが、
そんな想いが通じたからでしょうか、文庫の中からは、どこからともなく「久しぶり」の声が聞こえてきます。
三種町内からおばあさんと一緒に訪れた小学生の男の子は、「たくさん本があって驚いています。
学校の図書館ではできない調べ物がしたいです」と、この文庫を利用する日を楽しみにしていました。
また、今回文庫のアドバイザーとして関わった秋田県立図書館の山崎博樹さんは、
「なかなか大変でしたよ!」と冗談交じりに笑いながらも、
「ボランティアの人達が本当に頑張ってくれました。
こういう地域文庫というものは、最初のエネルギーもすごいけれど、
それだけじゃなくて、これからみんなで一緒に創り上げていくということが大事です。」
今日を迎えられてよかった、とホッとした様子でした。
今回ボランティアは町内外から35人あまりが参加。みなさんはおよそ4ヶ月間、2万冊の本を分類し、
備品を整え、この日を迎える準備をしてきました。寒い校舎での作業は思った以上の苦労があったそうです。
運営委員の一人で、鯉川小学校の卒業生でもある板垣さんは、
「ここは母校でもあり、25年勤めた場所でもありますから、こうして残ると聞いた時は嬉しかったですね。
わたしにとってはここの全てが思い出です。古い校舎の時からいましたから。
みんなでナメコやシイタケを栽培したり。鯉川っていうところは、とっても味のあるところですよ」
と感慨深い様子でお話くださいました。
帰り際、4時の閉館を惜しみ「また来るわ」と話す女性に、運営委員の男性が話しかけました。
「本な読まねしたっていいんだ。お茶飲みに来てけれ。(本は読まなくてもいいから遊びに来て)」
そう、みなさんここには本当に気楽にお越しください。できれば、帰りに本を入れられる丈夫な袋を持って。
近くの湧水で入れたコーヒーを準備して、鯉川のみなさんが待っていますよ。
【橋本五郎文庫】
みたね鯉川地区交流センター内
住所 山本郡三種町鯉川字片平34 電話/FAX 0185-87-3177
開館日時 毎週水、土、日曜日 午前10時~午後4時
貸出も可能 飲み物持ち込み可
橋本さんから贈られた社会科学や哲学、文学の本に加え、
地元の人たちが寄贈した童話やコミックも揃っています。
親子で遊びに来てください。
県北担当 やっつ
2011年5月6日15:00 | 県北情報 | Trackbacks (1)
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